読んだ本


灰色の北壁





クレタ島の山を踏破した著者による山岳ミステリー、といえば聞こえはいいのだけども、エーゲ海の頂に立つを読んだあとでは、文庫タイトルになっている短篇「灰色の北壁」の感想もちょっと変わってくる。読む順番としては、本作→エーゲ海→本作ってのがおもしろい。小説の設定に対する、作者の経験云々なんて、SF、歴史物、ホラー等の存在を考えたら、初めから問題にするのがおかしいと思う訳なんだけど。あまりに核心にせまった描写だったんだね、すでに「ホワイトアウト」の時から。それだけ既存の山岳ものを作者が好きだったのだろうと思います。

むしろ、アニメ業界出身ということから、映像を描き易い文体を得意としているのだと思います。ただねぇ、そうはいうけど山岳もの以外の作品だって、名作を残している作者なのだから、いつもビジュアル化しやすい作風というわけではないですな。